人には、どうしても誰にも相談できない時間があります。
弱さを見せたくない気持ちや、言葉にしてしまうことで現実になることへの怖さ、あるいは相手に心配をかけたくない思い。そうした理由から、胸の奥にしまい込んでしまうこともあるでしょう。
けれども、孤独な時間は決して「間違い」ではありません。
易経は、誰にも話せないときこそ、自分自身と静かに向き合う好機だと教えてくれます。
外に答えを求めるのではなく、内側の声に耳を澄ませる。
そこに、確かな智慧があるのです。
孤独は「整える時間」
易経には「艮為山(ごんいざん)」という卦があります。
山のように止まり、動かないことを象徴する卦です。
それは、無理に動かず、まず心を静めることの大切さを伝えています。
誰にも相談できないとき、私たちは焦りや不安で心が揺れています。
そんなときに急いで答えを出そうとすると、かえって迷いが深くなることもあります。
山のように一度立ち止まり、呼吸を整える。
そうすることで、見えなかったものが少しずつ見えてくるのです。
孤独な時間は、あなたを閉じ込めるものではありません。
むしろ、心を整えるために与えられた静かな時間なのかもしれません。
内なる声を信じる
易経は「内外のバランス」を重んじます。
外の評価や意見も大切ですが、最終的に選ぶのは自分自身です。
相談できないときは、逆に言えば、他人の声に左右されずに済む時間とも言えます。
たとえば「風沢中孚(ふうたくちゅうふ)」という卦は、内側の誠実さを大切にすることを教えています。
自分の本音に嘘をつかず、静かに問いかけること。「本当はどうしたいのか」「何を大切にしたいのか」と。
すぐに明確な答えが出なくても大丈夫です。
問いを持ち続けること自体が、すでに道を歩み始めている証だからです。
「誰にも言えない」からこそ育つ力
人は、誰かに支えられることで強くなります。
しかし同時に、一人で考える時間の中でしか育たない力もあります。
易経は、陰と陽の両方があってこそ世界が成り立つと説きます。
人とのつながり(陽)と、ひとりの時間(陰)。
そのどちらも、人生には欠かせません。
相談できない時間は、あなたが弱いから訪れるのではありません。
むしろ、あなたが次の段階へ進む前触れであることもあります。
内面が静かに成熟していく過程なのです。
自分で考え、自分で選び、自分で責任を持つ。
その経験は、やがてあなたの芯の強さになります。
小さな光を見逃さない
易経の教えのひとつに「微(び)を観る」という姿勢があります。
大きな答えではなく、小さな兆しを見ること。
誰にも相談できないときでも、日常の中には小さなヒントが隠れています。
ふと安心する言葉。偶然目にした文章。
心が少し軽くなる出来事。
それらは、あなたの心が選び取った光です。
完璧な答えを探さなくてもいいのです。
「今日は少しだけ前向きになれた」「昨日より少し落ち着いている」——そんな小さな変化を大切にしてみてください。
最後に
誰にも相談できない時間は、とても静かで、ときに寂しく感じるかもしれません。
けれど、その静けさの中には、あなた自身の声があります。
易経は、外に向かって大きく動くことだけが前進ではないと教えてくれます。
内側で整えることも、立派な歩みです。
今すぐ答えが出なくても大丈夫です。
焦らず、あなたの心のリズムに合わせて、少しずつ整えていけばいいのです。
そして、もし心が整ったときには、きっと自然と誰かに話せる日も訪れるでしょう。
その日までは、自分の内側にある智慧を、そっと信じてあげてください。
あなたの中には、すでに十分な力が宿っています。









